和菓子屋の店先には桜餅や鶯餅が並び、お花屋さんには桃も菜の花もチューリップも、というのに本日は豪雪の東京、どうしちゃったんでしょうか・・・・。まさしく「春の雪」ですね。
三島由紀夫の名作が真っ先に思い浮かびます。聡子と清顕。日本の上流階級と申しましょうか、息をひそめるような恋愛の進行が独特で、また、御令嬢様の侍女が「仕事」が巧い。こういう女性を味方に付けてオンナは生きて行くのだ、と初めて読んだ時は思ったものです。
なんでBurgundyのコラムでMISHIMA? 雪が降ったから、ですけど。女性だけでワインが飲みたい、そういう機会はとても増えています。恋バナに話が咲くこともあるでしょうが、青山でシャンパーニュやブルゴーニュを飲みましょう、という女性が秘密の恋があったとしても、口に出すとは思えない!「しのぶれど いろにでにけり・・・」はあるかも知れませんね。
ホワイトデイにさりげなく「杯を交わす」のにこのお店の雰囲気は丁度よさそうです(^-^)
杯と共に視線も交わして頂きたい・・・その先を書くのは野暮ってものですからやめておきましょう。Fall into love の為の飲み物、ヨーロッパでは伝統的に決まっております。
それについてはまた次回。こんなことをBurgundyのHPに書くのは誰だ!!!
皆様の召使、永井 栄でございます。今後はBurgundyで皆様をお待ち申し上げております。
日々精進と勉強を怠らず努めて参ります。皆様の御意見、御要望が何よりの教科書、どうぞよろしくお願い申し上げます。
春の雪
【コラム】2009年1月15日(木) 「ドメーヌ・シモン・ビーズ マダム千砂さんを囲む会」
今回、「Burgundy」で提供された白ワインは、
・ ブルゴーニュ・ブラン・ペリエール 2006年、
・ サヴィニー・レ・ボーヌ・ブラン 2004年、
・ コルトン・シャルルマーニュ 2005年
の3種類です。
2006年と2004年は適度に貴腐菌のついた白葡萄が育ったため、かえって、複雑味とフィネスが得られやすいとのこと。素晴らしいワインでした。
ブルゴーニュ・ブラン・ペリエール 2006年は、クラスを超えた果実味と凝縮感が際立っていました。
会場からは多くの驚きの声がわきあがり、ケースで購入したいと言う方もいらっしゃいました。即売ブースを設けたら、売行きはさぞかし良かったことでしょう。果実味の豊かさだけでなく、2006年の白ワインの特徴ともいえる凝縮感と粘性のある舌触り、バランスの良さがうかがえる秀逸な一品です。
サヴィニー・レ・ボーヌ・ブラン 2004年は、‘タストヴィナージュ’ラベルをご用意いたしました。
エチケットの珍しさが話題になり、タストヴィナージュに認定されるまでの過程を千砂さんが丁寧に説明されました。
この権威あるエチケットを得るには、数名のシュヴァリエ・ド・タストヴァンによるブラインドテイスティングを経なければなりません。
半数近く選考から漏れるワインがある中で「当然のごとく」その栄誉を勝ち取ったこのサヴィニー・ブランは、フローラル系の華やかな香りよりも、ミネラルと落ち着いた白い花の蜂蜜のニュアンスを感じました。
格の違いなのか、ヴィンテージの違いなのか、2006年ブランよりも味わいに複雑味がある一方で、香りは全体的にトーンが落ち着いており閉じ気味の印象でした。2,3年後にもう一度味わってみたい、気難しい一面がある白ワインでもありました。
白ワインが2種類出たところで、一皿目の料理「石鰈(カレイ)のポワレ、季節の野菜とあさりのスープ仕立て」をお楽しみいただきました。
石鰈は、大型で身の引き締まった天然物を使用し、アサリと石鰈のアラで丁寧にとったフォンをベースに仕上げました。
肉厚で旨みのある石鰈は、サヴィニー・ブラン 2004年との相性が抜群でした。スープを召し上がるといっそう白ワインが引き立つ等々、多くのお褒めの言葉をいただきました。
三種類目の白ワインの最後を締め括ったのは、お待ちかねのコルトン・シャルルマーニュ 2005年。
わずか5樽しか造られない偉大な白ワインは、日本への正規輸入わずか10ケース(120本)という貴重なワインです。
2005年は完璧とも言える健全な葡萄が仕上がったため、かえって白ワインのフィネスを表現するのが難しいヴィンテージだったと千砂さん。
しかしながら、味わってみると、そんな話はどこに行ってしまったのでしょうか、ただ美味しさに酔いしれるのみ。威厳ある香りと凝縮感のある味わいは他のワインを完全に圧倒しています。
白桃の果実香、丸く際立つ酸、ミネラル感が、清廉さの中に品格。ローストしたナッツ、アーモンドの香ばしい風味と重厚感ある味わいが飲み干した後も舌の上で長く持続します。
現在もすばらしい表情を見せていますが、15年から20年後にもう一度味わってみたくなる出来栄えでした。
赤ワインは、
・サヴィニー・レ・ボーヌ 1er cru オー・ヴェルジュレス 2002年、2004年、2005年、
・ラトリシエール・シャンベルタン 2000年
をご用意しました。
シモン・ビーズのフラッグシップともいえるオー・ヴェルジュレスの畑は、北風を受けやすい場所に位置しています。
吹くと翌日が晴天に恵まれることから、ブルゴーニュ地方で「神の風」と呼ばれる北風は、昼夜の寒暖差をもたらすので、糖度と酸度のバランスがとれた葡萄を育成します。また、湿気を飛ばすため、病気にかかるリスクも低減します。
さらに、粘土質と石灰岩という二つの地質が混在している土壌のため、複雑味も得やすいようです。
三つのヴィンテージの中では2004年の香りが一番華やかでした。私が一年前に飲んだ印象よりも果実味が増してバランスがとれています。2004年ヴィンテージについて、よい意味で期待を裏切ってくれました。実際、会場の声もこの三つのヴィンテージの中で「現在」飲むのなら2004が一番良いという声が多数でした。もう2,3年経過すれば、果実香がより華やかさを増すことが予想されるので、数本お持ちの方はしばらくセラー・エイジングさせてもよいでしょう。
対照的なヴィンテージが2002年でした。この三つの中では一番古いヴィンテージであるものの、香りが立ち込めるまでに一番時間を要しました。千砂さんが2000年以降でもっとも成功したヴィンテージのひとつとおっしゃっていたように、偉大なヴィンテージらしい、ストラクチュアがしっかりとした密度あるワインです。中盤から後半にかけての濃密な舌触りと、長く続く余韻がとても魅力的で、ある程度時間が経過した後に飲んで一番美味しく飲めたヴィンテージです。
現在飲むならば、デキャンタージュをした方がいいかもしれません。長期熟成が期待できるワインです。
2005年は巷の評価の通り流石の出来栄え。果実と酸のボリュームが一番感じられるスケールの大きいワインでした。若いヴィンテージということもありやや酸味を強く感じますが、その酸味をしっかりと支える果実味があるので、高次元でバランスがとれています。偉大なブルゴーニュの条件がボリュームとバランスにあるというならば、2005年のオー・ヴェルジュレスはその代表といっても過言ではないでしょう。
二皿目の料理=ブルゴーニュ地方の郷土料理でありかつ当店の人気の一品である「ジャンボン・ペルシエ」を大半の方が完食されていましたので、三皿目の料理「牛舌のブルゴーニュワイン煮込み」。ブッフ・ブルギニョン(牛ほほの煮込み)の牛舌版は珍しいのでは、と千砂さんにお尋ねしたところ、そのようなことはないようで、時々マルシェで購入するようです。
たくさんのお褒めの言葉をいただいたので、仕込みに1週間近く費やした小倉シェフも、感謝しきりでした。
なお、当店のジャンボン・ペルシエは、豚足などをじっくり煮込んで取り出した天然のゼラチンで仕上げているためコラーゲンたっぷり。牛舌のワイン煮込みもコラーゲンたっぷりなので、参加された方々の翌日のお肌はつるつるだったのではないでしょうか。
最後に堪能したワインは、ラトリシエール・シャンベルタン 2000年。
シモン・ビーズの数あるラインナップの中で、唯一コート・ド・ニュイ地区のワインです。本拠地から、畑が離れていることもあり、親交の深いクリストフ・ルーミエ(ドメーヌ・ジュルジュ・ルーミエ当主)が葡萄の栽培を主に行い、ドメーヌ・アルマン・ルソーも時にアドヴァイスをくれるそうです。
ラトリシエール・シャンベルタンは、地主からシモン・ビーズが醸造・栽培の委託契約を受けている分益耕作(メタイヤージュ)の畑であり、出来あがったワインの1/3が地主に分与されます。なお、以前の分益耕作者は、ドメーヌ・ポンソだとお伺いしました。
ドライ・フィグの香りと腐葉土、さらに、古いなめし革の香りが感じられ、やや熟成したジュヴレの特徴が表われています。舌触りもなめらかでシルクの舌触り。余韻も長く、最後を飾るにふさわしい正にグランクリュ・ワインでした。
「Vin je bois・・・ Verre je laisse(ヴェール、ジュ、レス)・・・」(ワインは飲み干し、グラスは残す)とブルゴーニュ大公に言わしめたことが、オー・ヴェルジュレス畑名の由来である、と千砂さんは語っていました。
ご参加された皆様と気さくにワイン談義に応じて下さった千砂さんのおかげで、開場は非常に賑やかで明るい雰囲気でした。どなたも楽く、ワインとお食事、そして会話を楽しまれました。スタッフ一同、感謝しきりの一日でした。
皆様が帰られた後の店内は「ワインは飲み干し、グラスは残す」状態だったのは言うまでもありません。(漆)
Vincent Geantet-Pansiot (ヴァンサン・ジャンテ・パンシオ)
Vincent Geantet-Pansiot(★) Charmes-Chambertin (0.50ha)
Vincent Gentet-Pansiot has been in charge here since 1982, when his father Edmond handed over control,and things have been gently improving ever since. No stems are used. Following a deliberate cooling down of the fruit for 8-10 days,the temperature is then allowed to rise to as much as 35℃ during a 12-15 day cuvaison. One third new wood is employed for the elevage. The wines are bottled early -after 12 months or so- without fining or filtration to capture the fruit while it is fresh.
These are intensely flavoured wines, but not blockbusters. There is succulent perfumed fruit and good balance:no solidity, no hard edges.Geantet is a likeable man,and his domaine a very good source.
Coates,Clive.The wine of burgundy;University of Calfornia press,Berkeley,2008.
テロワール考 ジュヴレ=シャンベルタン村のワイン(2)
ジュヴレ=シャンベルタンのトップドメーヌであるアルマン・ルソーは、同村の代表的な畑をほぼ全て所有する、テロワールの多様性を重視する造り手です。
そのため、彼の所有している畑を飲み比べると、ジュヴレ=シャンベルタン村にある各畑の特徴を深く理解することが可能といわれています。
幸運にも当店では、アルマン・ルソーの2005年ヴィンテージを同時に飲み比べする機会に幾度となく恵まれています。そこで感じた各畑の味わいはやはり教科書通りといえるものでした。
シャルム・シャンベルタンは、シャルム=チャーミングという名前どおりの味わいで、果実味が豊かで口当たりがやさしくソフトな印象です。2008年現在でも十分に楽しむことができる味わいで、早くからでも素直に美味しいと思えるワインです。
村名格のジュヴレ=シャンベルタンはシャルムをこじんまりさせた感じで、チャーミングな仕上がり。余韻の長さは中程度で、ルソーらしさを感じることができます。ある意味、村名格ワインやブルゴーニュルージュの典型ともいえるかわいらしい味わいです。
マジ・シャンベルタンは、シャルムより硬派な印象で、果実味よりもスパイス感と動物的なニュアンスが強くでています。しっかりとした骨格で、シャンベルタンと聞いて思い描く一般的なイメージ=男性的により近いといえるかもしれません。
ちなみに、アルマン・ルソーのマジ・シャンベルタンのスペルは Mazis-Chambertin ではなく「Mazy」Chambertin となっているのがユニークです。
リュショット・シャンベルタンは、クロ・ド・リュショットというクロ(石垣)で囲まれた小クリマすべてを所有しているため、モノポール表記がされているワインです。標高がやや高く風通しのよい場所に位置していることと、土壌が石灰質であることから、他の畑よりも、酸とミネラル感が強く感じられます。リュショットはミュジニーと対比されることがしばしばありますが、なるほどうなずける部分があります。
ジュヴレ=シャンベルタン 1er cru カズティエは、グランクリュが点在する南側の丘とは別の北側の丘に位置しています。他の畑に比べ、標高が若干高めではありますが、南東に向いた日当たりの良い急斜面と粘土質の土壌により、骨格のしっかりしたワインが生み出されます。アルマン・ルソーのカズティエも例外ではなく、いかにもジュヴレらしい風格をもちます。2005年ヴィンテージは若干ですが果皮が焼けたニュアンスがあり、タンニンも強めなので、飲むタイミングは他の畑よりもやや時間を要すると考えます。
では、アルマン・ルソーのフラッグシップといえる、シャンベルタン、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、クロ・サン・ジャックはどうなのでしょうか。
これらのワインは、皆様方に出会えるのを楽しみにしながら、当店のセラーにて静かに出番を待っております。(漆)
ブルゴーニュ名醸畑の所有権移転について
(2008.6 記)
デュジャックとモンティーユが、準大手ネゴシアン モワヤール所有の特級畑シャンベルタン、ロマネサンヴィヴァン、一級ヴォーヌロマネ ボーモン、同マルコンソールを含むブルゴーニュの名醸畑を購入したという報道を見た方も多いと思います。ほとんど所有者移動がないと思われていた特級畑と一級上位の畑の一括移動について驚きを禁じ得ない思いでした。
今年2月、ブルゴーニュを訪問した折に、グランジュールの試飲会で、2006年ヴィンテージの特級畑エシェゾーをコント・リジェ・ベレールで発見。「この畑は、2006年から借りていて、貸主の名前はいえない」とのことでした。
アンヌ・グロをドメーヌ訪問、試飲をした時、2007年ヴィンテージのエシェゾーが出されたので質問したところ「2007年ヴィンテージから、相続の関係で、グロ・フレールから畑を一部取り戻した」との話がありました。グロ・フレールの当主ベルナール・グロとアンヌは従兄弟なので、直接の相続関係はないはずですが、お金や血縁に関わる話ですので、それ以上の深いところは問いませんでした。
特に、アンヌ・グロの様な地元の名手が名醸畑を手に入れることは、畑が投資家(不在地主)の手に渡って大手ネゴシアンがワインを作るよりもずっと良い気がします。ともあれ、今後も、素晴らしい黄金の丘(コート・ドール)から出色のブルゴーニュ・ワインが作り続けられることを祈るばかりです。(松)
ヴィンテージ考 ブルゴーニュ2006年について
(2008.4 記)
グラン・ジュール・ド・ブルゴーニュ(Bureau Interprofessionnel des Vins de Bourgogne他)とDIVA(CHAMPYのクルティエ部門)のテイスティング・イベントに参加する為に、ブルゴーニュに2008年3月10日から3月15日の間、出張してきました。
ボトル詰めされたばかりの2006年ヴィンテージを数百種類、毎日、テイスティングするという大変な機会を得ました。
総論として、2006年ヴィンテージは冷涼な気候を反映して、作り手の技量と畑の格がそのまま反映されたワインが造られたと思います。
畑の格という点では、ACブルゴーニュはACブルゴーニュらしく、村名は村名らしく、グランクリュはグランクリュらしく、という感じです。
そして、2006年のブルゴーニュ・ワインは「赤はそこそこ、白は優良な出来」と言われていますが、北の地域、即ち、シャブリとジュヴレ・シャンベルタンは、果実味が不足した結果、夫々、ミネラル(シャブリ)・タンニン(ジュブレ)が目立つ、残念なワインが多かった様です。
グランクリュは、素直に畑の性格を現している様で、ヴォーヌ・ロマネ村でいえば、リシュブールが圧倒的な立体感とバランスを持っていたのが印象的でした。
あえて、ランキングをつけると :
1. アンヌ・グロ
2. メオ・カミュゼ
3. ジャン・グリボー
4. テイボー・リジェ・ベレール
5. A・F・グロ
6. グロ・フレール・スール
というのが個人的な順番です。
もちろん、グロ・フレール・スールも樽香が強すぎる点を除けば、十分な果実とシルキーで膨大なタンニン、そして真っ直ぐに伸びる雄大な余韻が、「王様の畑」を如実に表現している素晴らしいワインだと思いました。(宗)
ブルゴーニュ ヴィンテージ・チャート(1900年~1944年)
例外的な年: ★★★ 偉大な年: ★★ 良い年: ★
平凡な年: - 悪い年: ×
1900年: - 1921年: ★★
1901年: × 1922年: ★
1902年: × 1923年: ★★★
1903年: × 1924年: ★
1904年: ★★ 1925年: -
1905年: - 1926年: ★★
1906年: ★★ 1927年: ×
1907年: - 1928年: ★★
1908年: × 1929年: ★★★
1909年: × 1930年: ×
1910年: × 1931年: -
1911年: ★★★ 1932年: ×
1912年: - 1933年: ★★
1913年: × 1934年: ★★★
1914年: - 1935年: ★★
1915年: ★★★ 1936年: ×
1916年: × 1937年: ★★
1917年: ×(白 ★) 1938年: ★
1918年: ★ 1939年: ×
1919年: ★ 1940年: -
1920年: ★★ 1941年: ×
1942年: ★
1943年: ★
1944年: ×
参考文献
ジャッキー・リゴー『ブルゴーニュワイン 100年のヴィンテージ 1900-2005』(立花洋太訳、白水社)
ブルゴーニュ ヴィンテージ・チャート(1945年~1980年)
例外的な年: ★★★ 偉大な年: ★★ 良い年: ★
平凡な年: - 悪い年: ×
1945年: ★★ 1968年: ×
1946年: - 1969年: ★★★
1947年: ★★★ 1970年: -(白 ★)
1948年: - 1971年: ★★
1949年: ★★ 1972年: ★
1950年: × 1973年: -(白 ★)
1951年: × 1974年: ★(白 -)
1952年: ★ 1975年: ×
1953年: × 1976年: ★
1954年: - 1977年: ×
1955年: ★ 1978年: ★★★
1956年: × 1979年: ★
1957年: - 1980年: ★
1958年: ×
1959年: ★★★
1960年: ×
1961年: ★★★
1962年: ★★★
1963年: ×or-
1964年: ★★
1965年: ×
1966年: ★★
1967年: -
参考文献
ジャッキー・リゴー『ブルゴーニュワイン 100年のヴィンテージ 1900-2005』(立花洋太訳、白水社)
テロワール考 ジュヴレ=シャンベルタン村について
(2008.3 記)
一般的に、シャンボール・ミュジニー村は女性的でジュヴレ=シャンベルタン村は男性的といわれます。
しかし実際にジュヴレ=シャンベルタン村のワインを飲んでみると、口当たりが柔らかく感じられることが多く、そのイメージのギャップに戸惑ってしまうことがあります。
特に、一級と特級のジュヴレ=シャンベルタン村のワインは、日本人が考える「男性的」というイメージとは、ほど遠いのではないでしょうか?
更に、村名ワイン同士の比較であっても、男性的という表現を、ごつごつとしたタンニンの舌触りとボリュームの大きさと捉えるのであれば、モレ・サン・ドニ村のワインのほうがはるかに男性的であるといえます。当店でブラインド・テイスティングを楽しまれるお客様が、モレ・サン・ドニ村やニュイ・サン・ジョルジュ村の赤ワインをお出しした時に、ジュヴレ=シャンベルタン村と誤答されることがしばしばあるのも、それを証明しているかのようです。
とはいえ、ジュヴレ=シャンベルタン村のワインは、他のコート・ド・ニュイ地区のワインには感じとりにくい腐葉土や動物系の香りを備えている、堂々とした風格のワインです。舌触りは優しくとも、余韻にずっしりとしたやや下方直線の伸びがあり、香りは野性的で厳とした力強さを感じさせてくれます。
但し、特級シャンベルタンと特級クロ・ド・ベーズの2つのワインについては、余韻も含めて、別格のワインであり、同じ村の村名・一級・特級ワインとは異質の存在であり、むしろ、特級ミュジニーとの近似性さえ感じられます。この点は、改めて、コラムの中で、述べていきたいと思います。
纏めますと、ブルゴーニュワインの男性的という意味は、(分かり易い)飲み応えのことでなく、奥ゆかしさも備えた風格のことを言っているのではと思う次第です。 香・舌触り・余韻に着目すると、もっとジュヴレ=シャンベルタン村のワインを考え、そして、楽しむことができるのではないかと考えています。(松)
テロワール考 エシェゾーについて
(2008.2 記)
エシェゾーに対するイメージはどのようなものでしょうか。
DRCの特級ワインの飲み比べをすると、「軽い」と感じることが多いのがエシェゾーです。ヴォーヌ・ロマネ特有のしっとりとした魅惑的な香りが乏しく、ラ・ターシュやリシュブールにある奥行きやボリューム感が欠けています。
DRCを比較すると「エシェゾーは他のグランクリュに比べるとやや劣る」という意見もあながち間違いとは言えません。
マット・クレイマーも「ヴォーヌ・ロマネの特級畑のなかでは、エシェゾーはいささか物足りない存在で、ヴォーヌ・ロマネ村に共通した特徴がほかのどれよりもとぼしい」とその著書で記しています。たしかに、DRCの比較だけではなく、他の造り手のエシェゾーを飲んでみても、エシェゾーはヴォーヌ・ロマネのグランクリュにしては軽やかなものが多いという印象です。
しかし、エシェゾーはヴォーヌ・ロマネとは別個の個性をもったグランクリュと捉えることによって、印象はずいぶん変わったものになります。
すなわち、「エシェゾーはヴォーヌロマネの亜流」という見方を捨てれば、エシェゾー本来の魅力を感じることができるのです。
エシェゾーの位置を確認すると、ロマネ・コンティを中心とするヴォーヌ・ロマネ村の丘とは切り離された、クロ・ド・ヴージョ城の上の丘に存在しています。
DRCのエシェゾーの多くは、レ・プーライエールという小区画から産出されるのですが、これはヴォーヌ・ロマネ村よりもシャンボール・ミュジニー村に近い場所にあります。DRCのエシェゾーの味わいはヴォーヌ・ロマネから切り離して考えるのが自然です。
また、シャンボール・ミュジニー村に隣接するコンブ・ドルヴォーの谷付近に、小区画アン・オルヴォーがありますが、このリューディーはシャンボール・ミュジニーに近い場所にあることに加えて、谷風が吹くということから、シャープな印象のワインを産み出します(例:ドメーヌ ビゾー)。
そして、レ・シャン・トラヴェルサンやレ・ルージュ・デュ・バといった斜面上部に位置する小区画は、標高が高いだけでなく砂が多い地質のため、酸がしっかりとした味わいになりやすいようです(例:ドメーヌ メオ・カミュゼ)。
これらのことを考慮すると、むしろ、ヴォーヌ・ロマネ的な印象を抱きながらエシェゾーを味わうよりも、「エシェゾーのシャンボール・ミュジニー的側面」を意識しながら味わう方が、その魅力をきちんと捉えることができるのではないかと考えます。
もしも、エシェゾーに負のイメージを頂いているならば、果実味と舌触りに着目してあげてください。
赤系果実のきれいな香りと、柔らかで繊細な「ふわり」とした舌触りが感じられるはずです。
それらの魅力を感じ取れれば、エシェゾーもまたひとつのグラン・クリュなのだと自信をもって言うことができるのではないでしょうか。(漆)
ブルゴーニュ ヴィンテージ・チャート(1980年~2005年)
例外的な年: ★★★ 偉大な年: ★★ 良い年: ★
平凡な年: - 悪い年: ×
1980年: ★ 2000年: ★ (白 ★★)
1981年: ★ 2001年: ★★
1982年: - or ★ 2002年: ★★★
1983年: - 2003年: ★★
1984年: × 2004年: ★
1985年: ★★ 2005年: ★★★
1986年: -
1987年: -
1988年: ★★
1989年: ★★
1990年: ★★★
1991年: ★★
1992年: ★ (白 ★★★)
1993年: ★★
1994年: -
1995年: ★★
1996年: ★★
1997年: ★
1998年: ★
1999年: ★★ (造り手によっては★★★)
参考文献
ジャッキー・リゴー『ブルゴーニュワイン 100年のヴィンテージ 1900-2005』(立花洋太訳、白水社)
ヴィンテージ考 ブルゴーニュ1997年について
(2007.12 記)
1997年は、収穫時期の天候に恵まれたため、ブルゴーニュでは「暑い年」といわれているヴィンテージです。
比較的天候に恵まれた年であったのにもかかわらず、リリースされたばかりの1997年は、果実味はあるものの、酸度がやや低めに感じられました(「カリフォルニア的」という人もいます)。
そのため、1997年ヴィンテージに対する私個人としての印象は、軽やかでチャーミング、悪く言えばどことなく締まりがなくて薄っぺらいというものでした。
しかし、2007年現在、1997年ヴィンテージはとても好ましい表情を見せています。 10年を経過したワインらしく、香りがかなり開いています。もっとも、動物香やスパイス香のような熟成香が主体ではなく、フレッシュさを保った果実の香りが主体なので、若々しさを感じさせます。 若干、落ちが早いという欠点もあります。また、ヴォーヌ=ロマネのグランクリュなどは、本来あるはずの迫力がやや欠けているともいえます。 しかし、ほとんどの1997年物は、口当たりがやわらかく果実味に満ち溢れています。ある意味、その華やかな果実味と繊細でしなやかな口当たりは、ブルゴーニュらしさを十分にたたえたヴィンテージであるといえるでしょう。「Burgundy」での経験上、シャンボール=ミュジニー、ヴォルネイ、といったアペラシオンで当たりに出会うことが多いです。 1997年ヴィンテージもあと一月すると11年目。早熟な11歳なら思春期を迎えます。もしかすると、ワインも思春期を迎え、そろそろ本格的な熟成香が現われてくるかもしれません。(漆)
ヴィンテージ考 ブルゴーニュ2003年について
(2008.1 記)
03年は、火のヴィンテージと呼ばれるほど暑く乾燥した気候の年でした。そのため、白・赤問わず、どのワインにも厚みがあります。
果実やアルコールのボリューム感はあるのに、酸味は感じられず、また、多くの赤ワインに果皮の焼けた香りとピノノワールとは思えない程の多量のタンニンを感じることができるので、ナパ・バレー等、収穫時期に気温が高い新世界のピノノワールとそっくりなスタイルともいえるヴィンテージです。
凝縮度の高さから、AOCブルゴーニュはコストパフォーマンスが高いと仰る方もいます。
しかしながら、そのようなスタイルから、多くのブルゴーニュ愛好家から懐疑的な態度をとられているヴィンテージでもあります。
当店も同様のスタンスから、ごく一部の例外を除いて、2003年ヴィンテージはオンリストしていないのが現状です。
もっとも、評価を見直すような事例にあたることがあります。
2003年に欠いていると思われる酸味がきちんと感じられる物もあるのです。
それは、ヴォーヌ・ロマネ村の赤ワインです。
まだ検証過程なので、すべてのヴォーヌ・ロマネがそうであるとまではいえませんが、このアペラシオンの物は2003年であっても、酸味と果実味のバランスがとれているものに出会うことが多いと思います。
原因ははっきりとまではわからないのですが、高すぎる気温を抑制するような要素があったと思われます。
ヴォーヌ・ロマネの土壌は、水分を含みやすい粘土質なので、蒸散作用によって温度が高くなり過ぎないという意見があります。
また、降雨量が他の村と比べて若干多かったという専門家もいます。
昨年、ドメーヌ・ビゾーの当主に直接話をする機会がありこのことを尋ねると「2003年の夏はシャンボール=ミュジニー村はまったくといっていいほど雨が降らなかったのに対し、ヴォーヌ・ロマネ村には適度に雨がふった」と答えてくれました。
造り手さんのからの話なので、話半分に聞いたほうがよいのかもしれません。
しかし、ブルゴーニュはアペラシオンごとにミクロクリマが若干異なるのですから、降雨量に違いがあり、その違いが味わいに変化を与えてもおかしくはないと思えます。
ともあれ、いろいろと異端視扱いされている2003年ヴィンテージも、今年で収穫から5年目をむかえます。再評価するよい機会なのかもしれません。(漆)


