フレンチの本質とはなんでしょうか。そのキーワードをあえて一つあげるならば「マリアージュ」にあるといえます。
マリアージュ(仏語で「結婚」の意味)というと、ワインと料理が組み合わさることによってうまれる相乗効果をさすことが一般的です。しかし、マリアージュという言葉を、ワインと料理の相乗効果という狭い意味だけでとらえるのは誤りです。
なぜなら、ワインがなくとも、食材同士、あるいはや食材とソースといった、個々の料理一皿一皿に、「マリアージュ」は体現されているからです。
すなわち、フレンチがフレンチである所以は、ソース、付け合わせ、メインとなる食材等、様々な素材がもつ味わいが一つに融合して、新たな味わいを生みだすところにあると考えます。
そのような考えを前提にすると、ソースを使う料理において、決定的に重要なものがあります。
それは、ソースのベースとなるフォンです。
フォンとは、日本料理でいうダシのようなものです。赤ワインソース、カルダモンソース、蜂蜜のソース、カシスのソース・・・等々、フレンチには様々なソースがありますが、それぞれに仔牛、鶏、魚などから作り上げたフォンを使用します。
もちろん、フォンを使わなくともソースのようなものは作れます。しかし、それでは上述したような「味わいの融合」は実現しません。
極端なたとえではありますが、鴨に蜂蜜をかけただけの料理や、仔牛にカシスを振りかけただけの料理を想像してみてください。もしかすると、悪くない料理ができるかもしれません。
しかし、これではフレンチといえないでしょう。そこには、カシスと仔牛のコントラストはあっても、融合はありません。
ところが、フォンを用いてカシスをソースに仕上げとそれらは融合し、新たな味わいが生まれます。
つまり、フォンは食材とソースに使用されるスパイス等を一つの味わいにまとめ上げる重要な「仲人」なのです。
さて、そのソースのベースとなるフォンですが、作り上げるには相当の手間と食材が必要です。
今回は代表的なフォンである鴨のフォン、フォン・ド・キャナールの工程を簡単にご紹介いたします。
まず、鴨のガラと香味野菜をそれぞれ炒めます。火が入ることによって風味を増したこれらの具材を大きい鍋にいれ、火を加減しながら二日間ゆっくりと煮込みます。アクと鴨の油を丁寧にとりながら煮込むのですが、2日間でちょうど小ぶりのなべ2杯分程の油が出てきます。これは、人参等の色素が油に混じりこむため、ラー油のような鮮やかな朱色をしています。
こうしてじっくりと煮込んだスープを、シノワ(=こし器)をつかって不純物を取り除きます。まずは目の粗いシノワで大きめのだしがらを取り除き、細かいシノワで純度を高めます。
最後に、スープを再び火にかけて、煮詰めていきます。もちろん、このときも細かいアクが出てくるので丹念にすくいとります。おおよそ半日煮込んで完成です。
フォンを自前で用意しないレストランが多くなってきている中、Burgundyの厨房では基本に忠実に、精魂こめてフォンを作り続けています。こうした見えにくいところにまで力を注ぐことによって、素晴らしい「味わいの融合」が初めて実現されるのだと考えております。
2008/8/3