テロワール考 ジュヴレ=シャンベルタン村のワイン(2)


ジュヴレ=シャンベルタンのトップドメーヌであるアルマン・ルソーは、同村の代表的な畑をほぼ全て所有する、テロワールの多様性を重視する造り手です。
そのため、彼の所有している畑を飲み比べると、ジュヴレ=シャンベルタン村にある各畑の特徴を深く理解することが可能といわれています。
幸運にも当店では、アルマン・ルソーの2005年ヴィンテージを同時に飲み比べする機会に幾度となく恵まれています。そこで感じた各畑の味わいはやはり教科書通りといえるものでした。

シャルム・シャンベルタンは、シャルム=チャーミングという名前どおりの味わいで、果実味が豊かで口当たりがやさしくソフトな印象です。2008年現在でも十分に楽しむことができる味わいで、早くからでも素直に美味しいと思えるワインです。

村名格のジュヴレ=シャンベルタンはシャルムをこじんまりさせた感じで、チャーミングな仕上がり。余韻の長さは中程度で、ルソーらしさを感じることができます。ある意味、村名格ワインやブルゴーニュルージュの典型ともいえるかわいらしい味わいです。

マジ・シャンベルタンは、シャルムより硬派な印象で、果実味よりもスパイス感と動物的なニュアンスが強くでています。しっかりとした骨格で、シャンベルタンと聞いて思い描く一般的なイメージ=男性的により近いといえるかもしれません。
ちなみに、アルマン・ルソーのマジ・シャンベルタンのスペルは Mazis-Chambertin ではなく「Mazy」Chambertin となっているのがユニークです。

リュショット・シャンベルタンは、クロ・ド・リュショットというクロ(石垣)で囲まれた小クリマすべてを所有しているため、モノポール表記がされているワインです。標高がやや高く風通しのよい場所に位置していることと、土壌が石灰質であることから、他の畑よりも、酸とミネラル感が強く感じられます。リュショットはミュジニーと対比されることがしばしばありますが、なるほどうなずける部分があります。

ジュヴレ=シャンベルタン 1er cru カズティエは、グランクリュが点在する南側の丘とは別の北側の丘に位置しています。他の畑に比べ、標高が若干高めではありますが、南東に向いた日当たりの良い急斜面と粘土質の土壌により、骨格のしっかりしたワインが生み出されます。アルマン・ルソーのカズティエも例外ではなく、いかにもジュヴレらしい風格をもちます。2005年ヴィンテージは若干ですが果皮が焼けたニュアンスがあり、タンニンも強めなので、飲むタイミングは他の畑よりもやや時間を要すると考えます。

では、アルマン・ルソーのフラッグシップといえる、シャンベルタン、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、クロ・サン・ジャックはどうなのでしょうか。
これらのワインは、皆様方に出会えるのを楽しみにしながら、当店のセラーにて静かに出番を待っております。(漆)

[MAP] Chablis


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[MAP] Cote de Nuits


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テロワール考 ジュヴレ=シャンベルタン村について


(2008.3 記)
 
一般的に、シャンボール・ミュジニー村は女性的でジュヴレ=シャンベルタン村は男性的といわれます。
しかし実際にジュヴレ=シャンベルタン村のワインを飲んでみると、口当たりが柔らかく感じられることが多く、そのイメージのギャップに戸惑ってしまうことがあります。
  特に、一級と特級のジュヴレ=シャンベルタン村のワインは、日本人が考える「男性的」というイメージとは、ほど遠いのではないでしょうか?

 更に、村名ワイン同士の比較であっても、男性的という表現を、ごつごつとしたタンニンの舌触りとボリュームの大きさと捉えるのであれば、モレ・サン・ドニ村のワインのほうがはるかに男性的であるといえます。当店でブラインド・テイスティングを楽しまれるお客様が、モレ・サン・ドニ村やニュイ・サン・ジョルジュ村の赤ワインをお出しした時に、ジュヴレ=シャンベルタン村と誤答されることがしばしばあるのも、それを証明しているかのようです。

 とはいえ、ジュヴレ=シャンベルタン村のワインは、他のコート・ド・ニュイ地区のワインには感じとりにくい腐葉土や動物系の香りを備えている、堂々とした風格のワインです。舌触りは優しくとも、余韻にずっしりとしたやや下方直線の伸びがあり、香りは野性的で厳とした力強さを感じさせてくれます。

 但し、特級シャンベルタンと特級クロ・ド・ベーズの2つのワインについては、余韻も含めて、別格のワインであり、同じ村の村名・一級・特級ワインとは異質の存在であり、むしろ、特級ミュジニーとの近似性さえ感じられます。この点は、改めて、コラムの中で、述べていきたいと思います。

 纏めますと、ブルゴーニュワインの男性的という意味は、(分かり易い)飲み応えのことでなく、奥ゆかしさも備えた風格のことを言っているのではと思う次第です。 香・舌触り・余韻に着目すると、もっとジュヴレ=シャンベルタン村のワインを考え、そして、楽しむことができるのではないかと考えています。(松)

テロワール考 エシェゾーについて


(2008.2 記)
 エシェゾーに対するイメージはどのようなものでしょうか。

 DRCの特級ワインの飲み比べをすると、「軽い」と感じることが多いのがエシェゾーです。ヴォーヌ・ロマネ特有のしっとりとした魅惑的な香りが乏しく、ラ・ターシュやリシュブールにある奥行きやボリューム感が欠けています。
 DRCを比較すると「エシェゾーは他のグランクリュに比べるとやや劣る」という意見もあながち間違いとは言えません。

 マット・クレイマーも「ヴォーヌ・ロマネの特級畑のなかでは、エシェゾーはいささか物足りない存在で、ヴォーヌ・ロマネ村に共通した特徴がほかのどれよりもとぼしい」とその著書で記しています。たしかに、DRCの比較だけではなく、他の造り手のエシェゾーを飲んでみても、エシェゾーはヴォーヌ・ロマネのグランクリュにしては軽やかなものが多いという印象です。

 しかし、エシェゾーはヴォーヌ・ロマネとは別個の個性をもったグランクリュと捉えることによって、印象はずいぶん変わったものになります。
 すなわち、「エシェゾーはヴォーヌロマネの亜流」という見方を捨てれば、エシェゾー本来の魅力を感じることができるのです。

 エシェゾーの位置を確認すると、ロマネ・コンティを中心とするヴォーヌ・ロマネ村の丘とは切り離された、クロ・ド・ヴージョ城の上の丘に存在しています。
 DRCのエシェゾーの多くは、レ・プーライエールという小区画から産出されるのですが、これはヴォーヌ・ロマネ村よりもシャンボール・ミュジニー村に近い場所にあります。DRCのエシェゾーの味わいはヴォーヌ・ロマネから切り離して考えるのが自然です。

 また、シャンボール・ミュジニー村に隣接するコンブ・ドルヴォーの谷付近に、小区画アン・オルヴォーがありますが、このリューディーはシャンボール・ミュジニーに近い場所にあることに加えて、谷風が吹くということから、シャープな印象のワインを産み出します(例:ドメーヌ ビゾー)。
 そして、レ・シャン・トラヴェルサンやレ・ルージュ・デュ・バといった斜面上部に位置する小区画は、標高が高いだけでなく砂が多い地質のため、酸がしっかりとした味わいになりやすいようです(例:ドメーヌ メオ・カミュゼ)。

 これらのことを考慮すると、むしろ、ヴォーヌ・ロマネ的な印象を抱きながらエシェゾーを味わうよりも、「エシェゾーのシャンボール・ミュジニー的側面」を意識しながら味わう方が、その魅力をきちんと捉えることができるのではないかと考えます。

 もしも、エシェゾーに負のイメージを頂いているならば、果実味と舌触りに着目してあげてください。
 赤系果実のきれいな香りと、柔らかで繊細な「ふわり」とした舌触りが感じられるはずです。
 それらの魅力を感じ取れれば、エシェゾーもまたひとつのグラン・クリュなのだと自信をもって言うことができるのではないでしょうか。(漆)